DAILY OKAPPA

ただの主婦の雑記帳

ヒマものがたり

むかし或る処に、すぐ謝る女と絶対に謝らない女がいた。

すぐ謝る女は絶対に謝らない女の妹で、2人は双子だった。

http://www.flickr.com/photos/69401216@N00/58684954

photo by Pascal Vuylsteker

すぐ謝る女は、人から軽く扱われた。

そのような扱いは不本意だったが、「白黒つかない」或いは「勝ち目がない」と判断すればさっさと謝るのが女の常だった。

相手も人間だから「御免」と言われれば態度を軟化させるもの。これまでもたいていの人はモゴモゴと少し毒づいた後、女の言い分に耳を傾けてくれたし、実際に反省したかどうかはたいして重要じゃないーーーというのが女の考え方だった。

一方、絶対に謝らない女の周辺は争いが絶えなかった。生来、女は攻撃的な性質ではなかったが、困難な暮らしぶり・生真面目な気質・自尊心…そうしたものがケミストリーを起こし女は武装するに至った。もちろん10年前に理不尽な返り討ちにあったことも無関係ではないだろう。

当時の無念は時を経ても薄らぐことなく、寅午というゆるキャラとなって夜な夜な女の夢枕に現れた。

寅午は去り際に必ずこう言う。

「1ミリたりとも侵食させてはならぬ」 

☆ ☆ ☆ 

あるうららかな昼下がり、絶対に謝らない女は川辺を散歩していた。腰元には日本刀。眼光鋭い女の耳にも川のせせらぎが心地よかった。

そして橋のたもとにさしかかった時、女は身を堅くした。向こうからやって来る人影は10年前の面影を残している。忘れもしないパーマネントヘアー。川向こうに住む憎きコジュートーに遭遇したのだ。

刀の柄に手をかけた女に気づき、コジュートーもまたサーベルを鞘から引き抜いた。

2人は人目もはばからず斬りつけ合った。幸いどちらの刃も切れ味鈍く、腕前も三流だった。おかげで致命傷を与えるに至らなかったものの、その場に居合わせた者の目には、やたらめったら刀を振り回す2人のおばはんがただ痛々しかった。

絶対に謝らない女は手負いで戻った。すぐ謝る女は胸を痛め「とりあえず謝れば」と提案してみたが、絶対に謝らない女は自分から謝ることは絶対にないだろうと断言した。

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マチはなにかと物騒である。

何を隠そう、すぐ謝る女も護身用の短剣を懐に忍ばせてある。切れ味を試したことはないが、少なくとも姉のものよりは数段鋭いであろうことはだいたい、想像できた。

もう夕餉の時間である。

=おわり=

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